内藤泰弘 「血界戦線」にみる「異形」のもの
少年漫画の仲間に「異形」はいないんだろうかと血界戦線3巻読んでつらつら思っていた。
- 作者: 内藤泰弘
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2011/05/02
- メディア: コミック
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ヘルサレムズ・ロットがニューヨークの未来形なら、モブや下働きに異形が配置されるっていうのが移民そのまんまである。
スティーブンとこのお手伝いさんのヴェデッド。触手。
一方、スティーブンの開いたハイソなパーティーの面子はみな人間だし、この差はけっこうあからさまに見える。
BLEACHは犬隊長、ワンピはトナカイがいるけどそれも人に親しい生き物で明らかに異形というわけでもない。銀魂では異星から来たヘドロがその見た目のみで(ギャグとして)恐れられる。
“人ならざるもの”が共闘の仲間から一段遠くなるのは、人ならざるものが現実にいないからだろう。現実にいない作家の想像の結晶を思うまま動かすのに配慮が必要かよと言われればそれまでだが、見た目定義の囲いっていうのは、存外恐ろしいものではなかろうか。
少年漫画において心ひとつにできる仲間に、グロくも美しい(と人間が感じる)異形の見た目の者がいれば、おお、何もかも雑多な仲間がよくぞひとつに…とより感動できる、そういうのが燃えるから、いればいいなと思うだけ。あと、より高次での人種多様性の保証を見て安心したいなっていう。異形のものとの、その姿形を超えた交流が主題なら、相手が異形でもOKで、そういうのは沢山あるんだろう。もともと異形がメンバーっていうのはあるのかな、自分が知らないだけだろうか?
血界戦線に話を戻すと、パーティーがむなしく終わった後、ヴェデッドが、ほっとする位置に登場する。ここの交流は血が通っている感じがして好き。共闘の仲間じゃないけどね。あと後書きマンガの震災後の気持ち吐露も、作者自ら茶化しているくらいに気恥ずかしいけど、誠実という感じがした。