アントンシク「リンドバーグ」1、飛ぶことは憧れだ

リンドバーグ 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)

リンドバーグ 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)

四方を“ボーダー”という絶壁に囲まれた、高地に位置する王国・エルドゥラ。王家によって、空を飛ぼうとする行為が禁じられているその国で、少年ニットはプラモという不思議な生き物と暮らしていた。ニットの一族は代々“ボーダー守り”の家系だったが、父は空を飛ぼうとして実験中に死亡。そのせいでニットも“飛翔罪“犯の息子として不遇な毎日を。そんなある日、エルドゥラの外部から謎の飛行生物と、それに乗った怪しげな男が飛来! その事件が、ニットとプラモの運命を大きく揺さぶり、彼らを冒険へと導いていく…!? 誰も見たことのないSFアドベンチャー巨編!!

ちょうど並行してサン=テグジュペリの夜間飛行夜間飛行 (新潮文庫)読んでて、草創期の郵便飛行業だから仕事への誇りと人間の尊厳に満ちた硬質な話で、フランス人がこんな克己心強いとは意外っす…とか失礼なこと思っていた、対して本作は飛ぶことへの純粋な憧れ、快さ、重力や地上のしがらみから解き放たれるよう上昇する視線、見晴らす世界…同じ「空を飛ぶ」にしてもけっこう違うねえ。リヴィエールには飛ぶことが手段でありニットには飛ぶことが目的であったってか、ふむ。



なんとすばらしい倒置法…。空から落ちてきたシャークに出会って、自分も飛び立つことを決心する、旅立ちの日までが1巻。リンドバーグというニットの飼う生き物の種名は今すぐkiss me wow wow翼よ、あれがパリの灯だ分かりやすいオマージュだけどその造型は爬虫類と犬と尾翼のミックスで結構不思議。


絵のこというとアントンシクのカラーが好き。虹色っぽいというのか、いや違うな、玉虫色だ、不思議な色だよ。
おまけ:ニットに思いを寄せるモーリン。かわいいよう。