「観測者タマミ」井田ヒロトはやっぱりよかった!1巻
観測者タマミ (1) (角川コミックス・エース 275-1)
- 作者: 井田ヒロト
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/04/03
- メディア: コミック
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騙し、欺き、丸め込む!
脱・底辺《謀略》ファンタジー!!
“ある”と信じた物を箱の中に具現化する力「シュレーディンガーの猫」*2。神のごとき超能力を持つお嬢様・タマミを利用して、支配者層に成り上がろうとする舌先三寸の極貧詐欺師・征一郎(せいいちろう) ―ヤツは今日も今日とて嘘を吐く!
コミック帯は「氏ね、リア充!」と煽っているけどその実「氏ね、低俗な金持ちヤロー共!」という感じか。裕福な大学生と偽っている貧乏主人公が、代理で行った家庭教師先で、想像したものを創造できる中1少女に出会う。この能力を足がかりに…という感じ、1巻ではイカサマゲーム師と対決。
この漫画のココがすごい!
1:一話ごとの上げ下げがすごい!
シリアスからギャグまで話のトーンの上げ下げが巧み。例えば2話、君と僕に共通の生涯の一冊と嘯いて出させた本が国語の教科書(しかも小3の)という落としっぷりから、金子みすゞの「見えぬものでもあるんだよ」とダブルミーニングの朗読でいい話風に上げ、握手する寸前の大ゴマで大団円に上げ、と見せかけて、握手したら邪悪な笑みで「堕ちやがった―」という落とし、でも少女のメガネ先生呼ばわりでちょっと上げて終わり。(字で説明するとよく分からないな…)くるくると変わるテンポがいい。
5話、母親との愛憎相半ばするシーンもギャグにまぶして、最後には勘違いながらも心にくるようなシーンに持ってきていてすんばらしい。ここ。
2:テンプレ設定を裏切る描き方がすごい!
「鬱屈した大学生モドキのところに、超能力持つロリ少女が!」って設定は、普通は「凡庸」な男子と「かわいくて」なんのかんの最終的には「尽くしてくれる」少女がテンプレなのだと思うが、この主人公は暗い上昇志向渦巻いてて少女を利用する気満々だし、主人公がこの顔かっていう位にあくどい表情する。少女タマミはいまいち懐かない(主人公の名前すら覚える気がない)し、幼さが性的に魅力的という感じでもないし、こういうとこが小気味いい。
3:絵柄の安定がすごい!
前から全然絵柄が変わらないねえ、シャープめな絵。あと何気に毎回タマミの髪型が違うのが凝ってた。
2巻も来月出るんだそうでわーい。能力がどのように「利用」されてくのかに注目、虚虚実実の駆け引きですな。でも1巻末の引きでは超ファンタジー展開ぽいような気がする。
*1:戦線と名の付く漫画にはハズレがないって内藤泰弘が言ってた!
*2:シュレディンガーの猫=この能力というのは甚だ疑問ではあるが